「恋愛とは陶酔である」
これは学生時代に読んだある芥川賞作家の恋愛論の中で頻繁に登場してきた言葉でして、私はかなり気に入ってるものでございます。「陶酔」なるほど、恋愛とは酔いしれる事であるんですね。言わば二十歳までは御法度の飲酒にたとえた貴重な表現であります。と言う事は、「恋愛は二十歳になってから」と言う事ではないのかな。んなバカな。まったくとぼけた事を言ってますが、恋に酔いしれるって事は年齢に関係なく、誰にでもあるものでして、これがまた大変なものなんですね。すごいですよ、恋の力は。よく「人の恋路を邪魔するヤツは……」と言いますでしょ。他人の色恋を妨害する輩には、それはそれは悲惨な結末が待っている訳なんですね。怖い怖い。十分気をつけたいものでございます。ほら、シェークスピアの『ロミオとジュリエット』しかり、夏目漱石の『こころ』しかり、武者小路実篤の『友情』しかり、でございます。先人方はよく知ったものでした。私たちはその教訓を活かさなければなりませんね。兎に角、人を愛する事の尊さを。いえね、こんな偉そうな事を言ってるこの私、こう見えても私にだって、恋愛の一つや二つ、経験がない訳ではありません。私にだって、それは気の利いた小説の一作や二作できあがるようなラブストーリーの経験はありますよ。でもそれを一つ一つここに書くには、あまりにもスペースに余裕がありません。ですからここでは、これまで私が体験してきた数多い恋愛の中でも、これはと思えるものを、ここでは紹介したいと思ってるんです。まあ、本心を言いますとね、どうってことないお話なんです。でも、私個人の思い出、言ってみれば青春のすべてでありました。これはけっしてフィクションではございません。ですから、私のこの体験談を読んで下さった方は、「ああ、そんな事もありかな」なんて思って下されば光栄でございます。なにとぞ、よろしくお願い申し上げます。