ファッションショー

あれはちょうど夏の事でした。かねてから進行中のファッションショーの仕事をしていた時です。ああ、ファッションショーと言っても、勿論、私がやってたのは、あんなパリコレのようなどでかいものじゃなく、ワーキングファッションの方でして。いわゆる作業服です。よくありますよね、ガテン系の職人さんたちが好んで着てるような派手派手のヤツが、まさにあれです。とてもカラフルでオシャレなんですが、結局のところ作業服なんですね。そのファッションショーの仕事が無事に終えた時、私の気持ちは天にでも登るような錯覚を覚えたものです。たった二日間のファッションショーのために、私は三ヵ月も前からその準備に追われていたのですから。言ってみれば三ヵ月分のストレスが一挙に発散されたようなものです。ましてやこのイベントは、私がプランナーとして初めて企画から携わったものでして、生涯忘れる事ができないものとなったのでございます。言い知れぬ解放感に平常心がプッツリと切れてしまいました。もう、今夜は何でもやってやる、なんてどでかい気持ちになっちゃった。人間、こうなると怖いものですね。それで帰りの電車の中で偶然に再会した中学時代の同級生である彼女に、「これから飲みに行かない?」なんて、普段の私の口からはけっして出てこない言葉が、あたかも日頃の口癖の如くに、ごく自然に飛び出したから驚いた。そして、私のその誘いに安易に乗っかってきた彼女もまたどこか普通ではなかったんでしょう。兎に角、私たちはそれから止めどなく飲んだ。ワイワイガヤガヤ、二人きりで盛り上がったんです。次から次へと飲み屋をハシゴしてしまい、彼女を無事家に送り届けたのは朝方でした。やっちまったな、と後悔しても遅かった。私は自分の悪乗りを徹底的に反省したのでした。ところが、あろう事か、それからすぐに彼女との交際がスタートしたのです。人の出会いなんて分からないものなんですね。

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