東京ラブストーリー

ちょうどその時代、テレビではトレンディードラマなるものが流行っておりまして、中でも『東京ラブストーリー』は名作中の名作と言える作品でした。毎週、ドラマのクライマックスのシーンは、心傷ついた女が夜の街に飛び出し、それを男が追いかける。BGMは小田和正さんの名曲、『ラブストーリーは突然に』です。そう言えば、あの頃、よく夜中の街を追いかけっこしてたカップルがおりましたっけ。いやいや、私たちも実はそれをやったクチでして。彼女はものすごく感情の起伏が激しくて、何かあればすぐに傷つき、夜な夜な外へ走ってっちゃう。私はそれを追いかけるのですが、これがまた大変なんです。なんせ季節は真冬になってましたし、彼女は学生時代には長距離選手でしたから、私が追い付けるわけがない。それでも息を切らして追いかけるますと、彼女も気を使ったのか、ちょうど公園の前で私に捕まるのです。いつも。それからコンビニで温かいおでんを買ってあげますと、彼女の機嫌はケロッとなおる。その繰り返しでした。今思えば、あれが青春だったんですね。青春とは走って、追いかけて、そして腹を満たして笑う。こうでなくちゃね。寂しいだけの青春なんていりません。また、海に向かって叫ぶだけの青春なんて論外です。私たちの同棲生活はわずか三ヶ月だけで終わりました。考えてみれば、嫁入り前の箱入り娘を、どこの馬の骨とも分からない男のところで寝泊まりさせるなんざ、とんでもない事でございます。とうとう彼女の両親が私のアパートまで、愛娘を連れに来たのでした。これには彼女も降参したようです。黙って両親と共に実家へ帰って行きました。私のアパートは再び寂しい四畳半一間の部屋に戻ったのでございます。一人虚しく夕食をとりました。思い出のコンビニのおでんも、あまり美味しくない。ただ、おでんの具の一つ一つの味に、彼女との思い出が詰め込まれているようで、なんだか悲しかった……。

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